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 「今日もダメ?昨日も一昨日もその前も・・・ダメばっか。何かもう聞き飽きた。・・・俺、やりたいだけじゃないけど、もう無理だよ。ごめん、帰る。じゃあな。」 
盛大な溜息を漏らしうんざりした声で最後の言葉を告げ彼は出て行く。 
ベッドの上、一人取り残された幸は唯、頭をさげたまま黙り込んでいた。 
美園幸・性別男---私立常誠学園高等部二年、先ほど出て行った彼の名は新堂夏樹・性別男とある県立高校の二年。 
二人は付き合って一年の恋人同志・・・だけど、キスから先には進めない二人だった。 
通算何回目か覚えていない位の挑戦は失敗でとうとう夏樹は怒り幸はうなだれたまま溜息を漏らす。 
出会いは某ロックバンドのライブ会場で席がたまたま隣り同志で意気投合してから、友達付き合いが会えないもどかしさからいつのまにか二人恋愛になってた。 
恋人同士になってから半年はお互い顔見るだけで、なんとなく、照れくさくてキスするのにも長い時間をかけたが、やっぱり10代。 
やりたいさかりの男は、キス以上がしたくて・・・でも幸はできなかった。 
興味はあるし、好きな人に触れてみたいとも思うのに、必然的にどこから見てもすばらしい激痛を受けるのが自分だというのも認めていたけれども-----怖いのだ。 
女性との経験すら無いのに男、しかも何もかも初心者なのにもし、万が一はまったら自分が怖い。 
気持ちも体も繋いで幸せなのがほんの数ヶ月だと笑えない先を、どうしても考えて幸はキス以上ができなかった。 
きっと夏樹はいつまでも焦らし、怖がる自分に飽きてもしかしたら別の誰かをみつけてしまうかもしれないそれでも-----やっぱり。 
幸は再び溜息を漏らし、泣きそうな自分を叱咤する。 
 
あれで本当に終わりだと思わせる程夏樹からは連絡のひとつも無く、かといって幸からは電話もメールも直接会いに行くことも出来ずに時間だけが過ぎていく。 
その日もぼんやり、と幸は家へと歩き出して暫くしてから知らない内に夏樹の高校へと向かう自分にやっと気づいた。 
まだ会う勇気を持てず方向転換しようとして幸はありえないというより見たくなかった光景を目にする。 
幸のいる場所から丁度十字の方向へと歩いていたカップルの片割れは幸の良く知る人だった。 
女の子と仲睦まじく歩いていたのは夏樹だった。 
幸は彼らの視界に入らない様にその場から走り去る。 
そして、はっきりと認識する。 
夏樹の中ではあの日あの場所で幸との事は終わっていたことに-----自分が悩んでいた頃、夏樹はもったいぶる男の幸より女の子を選んだ事を。 
笑えるのか泣けるのかわからなかった。 
幸はまだこんなに夏樹を好きな自分がどうしたら良いのか分からなかった。 
家にどう帰り着いたのかさえ分からず翌朝目はびっくりする程腫れていて幸は鏡の前大きな溜息を漏らす。 
一晩寝ても女の子と歩いてた夏樹の姿は頭から離れてはくれなかった。 
思い出すたびに鼻の奥が痛くなり泣きそうで幸はそれから一日中その事でいっぱいで何をしてても思い出し何も手につかなかった。 
このままじゃいけないと分かってはいるのに何をするべきか分からず日々だけが過ぎていき幸は夏樹の中では終わってるだろう事を自分もきっちり終わらすべきだ、との結論に至った。 
具体的にどうしようなんて案もなく漠然と夏樹に会わないと、と思う。 
いつまでたっても先に進めず立ち止まったままの自分から脱したくて連絡もせず勢いだけで夏樹の家へと向かう。 
 
家の前まで来てから留守だったり彼女がいる時の事を考えたが幸は頭を振るとチャイムへと指を伸ばす。 
警戒なチャイム音の後少しの沈黙後『はい』と答える声が夏樹である事に気づき幸は息を整える。 
「・・・お久しぶりです。美園ですがお時間宜しいでしょうか?」 
おずおずと告げる幸に通話は無常に切られ彼は呆然とその場へと立ち尽くす。 
出直す方が良いのか考えだす幸の前、扉が開き夏樹が出てくる。 
「・・・何か用?」 
幸の前まで来ると夏樹は不機嫌そうに低い声で問いかけてくる。 
「あの・・・話があって、今大丈夫ですか?」 
「無理なら出直すの?」 
躊躇いながら言う幸に夏樹は意地悪く問いかけてくる。
「もちろん、出直します。都合の良い日でも教えてくれたらその日に来ます。」 
頷き答える幸に夏樹は苦笑する。 
「冗談だよ。話すぐ終わる?・・・そうじゃないなら中入る?」 
「いえ、ここで。」 
断る幸に目線で夏樹は先を促す。 
「あの・・・夏樹・・・いえ、新堂さんと知り合いになれて良かったです。でも、僕は希望に応えられなくて申し訳ありませんでした。もう連絡はしません、お会いする事も無いかと思いますが貴重な時間を無駄にして申し訳ありませんでした。・・・謝ろうと思ってたのですが今更ですいませんでした。・・・遅くなりましたがありがとうございました。・・・・・・さようなら。」 
「・・・何、それ。」 
最後に頭を下げる幸に夏樹は言葉がわからないのか問いかけてくる。 
「話はこれだけです。じゃあ僕帰ります。」 
疑問に答える事無く幸は去ろうとする。 
「待てよ!意味わかんないんだけど・・・何のこと?」 
「・・・言葉通りです。」 
去りかける幸へと夏樹は問いかけてくる。 
淡々と返す答えに夏樹は帰ろうとする幸を強引に家の中へと引きづりこむ。 
「・・・話はあれだけなんですけど・・・・・」 
「いいから、入れよ。早く・・・部屋で話そう。」 
戸惑う幸を夏樹は自室まで強引に連れて行く。 
 
強制的に幸をベッドに座らせると夏樹は椅子へと座る。 
「・・・で、なんでああいう話になるわけ?それって、俺と別れたいって事?」 
「僕たち、もう終わってますよね?・・・だから、あれは僕のけじめです。」 
椅子の背を前にして背もたれに腕を乗せ問いかける夏樹に幸は単純に語る。 
「・・・何それ。いつ?・・・俺は別れた覚えが無いんですけど。」 
呆然と言う夏樹に幸は内心首を傾げながらも先を続ける。 
「最後に会った日”もう無理だ”って言いましたよね?だから、僕も考えました。それで・・・」 
「あれは別れる別れないの話じゃないし!それで、俺とは無理だって思ったわけ?音信不通の末考えたのが別れ?」 
少しだけ興奮気味に言う夏樹にでも、と幸は言葉を繋ぐ。 
「夏樹にはちゃんと『彼女』がいるから、要望に応えられない僕よりそっちを大事にして下さい!その方が普通だし。・・・話はそれだけです。僕・・・」 
「はぁ?・・・彼女って何。何でお前がいるのに他のを俺が作るわけ?・・・幸、他に好きな人できたわけ?だから、俺はいらない。・・・そういうこと。」 
お互いに話がすれ違ってる気がして幸は呟く。 
「僕じゃなくて・・・『彼女』じゃないの?」 
「・・・・何のこと?」 
不審気に問う夏樹に幸は見たことを言う。
「学校から出てきた二人仲良さそうに歩いてた。・・・だから、僕は終わったんだって。」 
「仲良く?・・・・・・彼女じゃないし、ただのクラスメートだよ。俺は腕組んだり、手繋いだりしてたわけ?」 
思い返すとただ並んで歩いてただけの気がして幸は首を振り呟く。 
「・・・・・雰囲気が親密そうで・・・」 
「何だよそれ。・・・で、誤解は解けました。それでも、俺と別れたい?」 
心持ち顔を幸に近づけ問いかける夏樹に幸は何も反応せずに黙る。 
「・・・どうする?」 
「僕は夏樹の希望に応えられないかもしれないけど・・・」 
「で、俺とは別れる?」 
泣きそうな顔して黙る幸に夏樹は椅子から降りると彼へと近づく。 
「・・・・・。」 
「何が怖いのか聞いて良い?・・・ダメなのが怖いからって、何が怖い?」 
幸の手を握り夏樹は問いかけてくる。 
「・・・戻れない気がして。何も知らない僕に返れないから・・・夏樹に捨てられた後僕はどうなるのかが怖くて・・・・・。」 
長い沈黙の後幸はぽつり、ぽつりと話し出す。 
「・・・捨てる前提かよ。俺は今幸が好きだよ。今の俺はおまえの事しか考えてない。それじゃダメなのか?好きな人に触れたいとかいうのは別れる先があるならダメなわけ?」
  
「・・・それは・・・」 
「ダメ?」 
俯いたままの幸に夏樹は顔を近づけてくる。 
幸は次に何が来るのか気づきそっと瞳を閉じる。 
 
柔らかな温もりが思った場所に触れ幸は思わず夏樹へと手を伸ばす。 
そのままベッドへと倒され、キスだけが繰り返し与えられる。 
欲しいと思う欲求は止まる事を知らないものだと幸は思う。 
まだ、怖い気持ちはあるのにキスより先がいつもと違い欲しくて堪らなかった。 
「・・・夏樹・・・」 
「・・・何?」 
「しよう。・・・何か、出来そう・・・」 
「・・・俺今度こそ止まんないよ?・・・良いの?」 
腕を掴み誘う幸に夏樹は少し躊躇い問いかける。 
何も言わず頷く幸に夏樹は再び彼にキスを与えると濃厚なキスへと変えて繰り返す。 
絡められた舌と食われそうなキスというより接吻?を与えられ幸は口の中に溜まった唾液が唇の端から垂れるのを感じる。 
一度唇を離し拭ってくれる夏樹に幸は軽く微笑んだ。 
「・・・平気?」 
躊躇う様言う夏樹に幸は頷くと彼へと可愛らしいキスをし目線で先を促す。 
苦笑した夏樹は気を取り直すかの様幸へとキスをすると唇から首筋、下へと下がっていく。
  
幸の上の服を脱がし素肌へと夏樹は躊躇いもせずにキスを繰り返す。 
そして下腹部へと手を伸ばす。 
キスで熱くなった体に比例してそこそこ反応してるそれに夏樹は下着ごし触れだした。 
「・・・夏樹!」 
「拒んでも止めないよ。」 
「・・・僕だけ、やだ・・・」 
顔を赤く染めたまま言う幸に夏樹はじゃあと彼の手を自らの下腹部へと導く。 
「触って・・・顔見てやろう。」 
にやり、と笑みを浮かべ話す夏樹に幸は何も言わずに触れてみる。 
熱くて自分より大きいのは身長や体格だけじゃ無い気がする。 
「・・・幸、俺と同じ様にして・・・」 
耳元へと話しかけ夏樹は直に触れだした幸自身を強弱をつけ扱きだす。 
自慰をするより他人に触られることがこんなにも興奮するものだと幸は初めて知る。 
必死にかみ殺す声はたまに鼻にぬけ幸はたいしたお返しも出来ずに独り夏樹の手の中へと白濁を吐き出した。 
「・・・ごめん、僕だけ・・・」 
少し乱れた息で謝る幸にキスをすると夏樹は幸の下腹部へと顔を近づける。 
「・・・夏樹?」 
驚く幸に構わずに夏樹は彼さえも触れない場所へと指を伸ばした。 
長いのか短いのか分からない位指とあろうことか舌で慣らされ幸は一瞬の間の後入り込んでくる熱くて堅いものに息を詰める。 
「・・・っ!」 
漏れる声をかみ締める幸に我慢するな、と告げると夏樹は動きだす。 
「・・・っ・・・あっ・・・・んっ!・・・」 
痛いのにそれだけじゃない-----分からない感覚。 
でも夏樹と一つになってる、幸はそれだけははっきり理解する。 
おなかの奥が出し入れされるたびにじわじわと熱くなる。 
言葉もなく互いの乱れた息と軋むベッドの音だけが部屋を支配する。 
中で夏樹がはじけたのと同時に幸もその日二度目の快感を得る。 
  
心配はあれから気にしない様にしてる。 
一度体を繋げたからか、幸は夏樹とのSEXに恐怖を感じる事は無くなった。 
それどころか快感さえ見出し始め夏樹を喜ばせた。 
「家でのHはマンネリしそうだよな。」 
「・・・何?」 
同じ高校なら学校Hとかできんのに、とベッドでぼやく夏樹に幸は新たな悩みが増える。 
でもそれは嬉しい悩みで彼の希望が叶えられそうな行事については暫く口を閉ざそうと決めると夏樹へと幸は抱きつく。 
「好きだよ、夏樹」 
言葉の変わりに夏樹は幸を抱きしめてくれる。 
温もりに幸は幸せな眠りへとゆっくりと落ちていく。 
 
 
いざ書こうとしたら上手くいかないですね〜。次こそもう少し頑張ります。 20070201 
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